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【最新時事】 第21回副首都推進本部会議(指定都市都道府県調整会議)について ≪大阪≫

大阪では,昨年12月28日に第21回副首都推進本部会議が開かれた.

この会議は,指定都市都道府県調整会議を兼ねている.

大阪市のサイトによると,指定都市都道府県調整会議は以下のように書かれている.

 

地方自治法の改正により、指定都市及び当該指定都市を包括する都道府県は、事務の処理について必要な協議を行うため、平成28年4月1日から指定都市都道府県調整会議を設けることになりました。

大阪府大阪市の事務の処理について必要な協議を行うときは、副首都推進本部会議を指定都市都道府県調整会議として位置付けています。』


今回の議題は,「府市一体化・広域一元化に向けた条例の検討にあたって」となっている.

本来であれば,大都市制度の変遷と問題点,そして大阪で提案された解決策についての記事を作成した後が良いと思うが,現在進行形の事案なので優先的に記述することにする.

この記事で使用する画像等は,以下の公的なサイトで公表されている物である.

詳細はリンク先を参照してみることを勧める.

 

 

 今回は,大阪のこれまでとこれからが書かれているが,これまでについては大都市問題として別記事にまとめる予定なので割愛する.

また,これからの部分についても方向性を決めただけで中身までは決まっていないので,議会に提出された素案あるいは可決された際の本案については大都市問題の記事における大阪の取り組み例にて詳細に記述することにする.

 

資料3 府市一体化・広域一元化に向けた条例の検討にあたって(検討の視点)

 政令指定都市などの大都市には二重行政の問題が付きまとう.

二重行政の定義は明確に決まってはいないが,山崎幹根(2012)は二重行政の特徴について以下のように記載している.

 

ⅰ.垂直的に並立する行政組織の間で,主として都道府県と市町村,あるいは国と都道府県との間において生じる現象である.

ⅱ.垂直的に並立する行政組織が,主としてそれぞれ重複する区域および区域内の住民に対して,同一政策分野における類似政策を実行する状態である.

ⅲ.組織間の調整,政策実行上の役割分担の整理不足,または欠如によって,政策の実行に非効率が生じ,また民主的統制の阻害要因などの弊害が生じる.

 

山崎幹根(2012):「『二重行政』の解決は可能か-効率性と民主的統制の視点から」『都市問題』第103 巻第4 号、(公財)後藤・安田記念東京都史研究所

 

これに加えて,大阪では

①市域拡張を巡る論争(特別市運動・市域拡張の対立)

②市は市域内,府は市域外という縄張り意識(政令指定都市≒特別市として運用したため)

③ほぼ全域が都市化している大阪府の中心に大阪市が位置しているしているという地理的構造に加えて,堺市東大阪市などの周辺市も高い行政能力を有している市が増えたことで,実質的に大阪市と同レベルの都市域が拡大傾向にある

 

こういった歴史的背景も相まって,大阪での二重行政はより深刻となっている.

http://www.masse.or.jp/ikkrwebBrowse/material/files/201103sp01.pdf

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このような二重行政時代と比較して,現在では府市一体となった政策がある程度は実行できている.

良いか悪いかは別として,大阪・関西万博やIR(統合型リゾート)誘致など,協力関係が大きな力となっている例は数多くある.

IR誘致に関しては,愛知県と名古屋市が別々の場所を候補地にするなど,県市の連携がとれていない状態とは対照的である.

そこで,資料には府市一体となって進めるための制度作りが必要不可欠であると書かれている.

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その解決策の1つとして,広域一元化に向けて,

《対象》

特別区制度で府移管とされたもののうち成長やまちづくりに関するもの

・「産業振興」
・「都市魅力向上」
・「まちづくり、都市基盤整備」など

《方法》

・基本方針等の副首都推進本部会議での決定
・まちづくり関連などの事務について、事務委託や機関等の共同設置等を検討

・副首都推進本部会議は条例に明記し、地方自治法の「指定都市都道府県調整会議」よりも強固な仕組みを構築

となっている.

 

 まだ詳細は決まってはいないが恐らくこういう形になるだろう.

1.まちづくりや産業振興等の対象分野の政策に対して,副首都推進本部にて議論する

2.大阪市大阪府の議論の結果,必ずその会議の中で結果を決める.

3.反発状態であっても,必ずどちらか(基本は広域自治体である大阪府)が担当するように決定し,大阪会議のように欠席できないようにする←本部長である大阪府知事が議事の決定を行うため

といった感じだろうか?

 

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これだけの内容では何とも言えないが,どちらかに確実に決めて一体となって進めようというのは中京都構想に近いモノを感じられる.

しかしながら,広域自治体に権限だけでなく財源も移管するという考え方が受け入れられるかどうかが問題になると思われる.

とはいえ,基本的には大阪府に事業が一元化され,そのための財源も必要であるとの立場から,大阪府に財源も移管されることになる可能性は高いと思われる.
 

今後の動向に注目したい.

また,総合区に関しては,2017年において8区案が提案されているので,別の記事でその案を基にまとめていこうと思う.

 

*付録 

地方自治法

(指定都市都道府県調整会議)
第二百五十二条の二十一の二 指定都市及び当該指定都市を包括する都道府県(以下この条から第二百五十二条の二十一の四までにおいて「包括都道府県」という。)は、指定都市及び包括都道府県の事務の処理について必要な協議を行うため、指定都市都道府県調整会議を設ける。
2 指定都市都道府県調整会議は、次に掲げる者をもつて構成する。
一 指定都市の市長
二 包括都道府県の知事
3 指定都市の市長及び包括都道府県の知事は、必要と認めるときは、協議して、指定都市都道府県調整会議に、次に掲げる者を構成員として加えることができる。
一 指定都市の市長以外の指定都市の執行機関が当該執行機関の委員長(教育委員会にあつては、教育長)、委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員のうちから選任した者
二 指定都市の市長がその補助機関である職員のうちから選任した者
三 指定都市の議会が当該指定都市の議会の議員のうちから選挙により選出した者
四 包括都道府県の知事以外の包括都道府県の執行機関が当該執行機関の委員長(教育委員会にあつては、教育長)、委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員のうちから選任した者
五 包括都道府県の知事がその補助機関である職員のうちから選任した者
六 包括都道府県の議会が当該包括都道府県の議会の議員のうちから選挙により選出した者
七 学識経験を有する者
4 指定都市の市長又は包括都道府県の知事は、指定都市の市長又は包括都道府県の知事以外の執行機関の権限に属する事務の処理について、指定都市都道府県調整会議における協議を行う場合には、指定都市都道府県調整会議に、当該執行機関が当該執行機関の委員長(教育委員会にあつては、教育長)、委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員のうちから選任した者を構成員として加えるものとする。
5 指定都市の市長又は包括都道府県の知事は、第二条第六項又は第十四項の規定の趣旨を達成するため必要があると認めるときは、指定都市の市長にあつては包括都道府県の事務に関し当該包括都道府県の知事に対して、包括都道府県の知事にあつては指定都市の事務に関し当該指定都市の市長に対して、指定都市都道府県調整会議において協議を行うことを求めることができる。
6 前項の規定による求めを受けた指定都市の市長又は包括都道府県の知事は、当該求めに係る協議に応じなければならない。
7 前各項に定めるもののほか、指定都市都道府県調整会議に関し必要な事項は、指定都市都道府県調整会議が定める。

 

《副首都推進本部》

副首都推進本部設置要綱

(設置)
第1条 大阪府大阪市及び堺市(以下「関係団体」という。)は、東西二極の一極を担う「副首都・大阪」の確立に向け、副首都推進本部(以下「本部」という。)を設置する。

(所掌事項)
第2条 本部は、「副首都・大阪」の確立に向け、次の事項を所掌する。
(1) 中長期的な取組み方向の検討に関すること。
(2) 大阪府及び大阪市における新たな大都市制度の再検討に関すること。
(3) 大阪府及び大阪市又は大阪府及び堺市の広域行政並びに類似する施設、施策、事務事業などいわゆる二重行政の解消に関すること。
(4) その他大阪府知事大阪市長及び堺市長が指定する事項に関すること。

(組織)
第3条 本部は、本部長、副本部長及び本部員をもって組織する。
2 本部長は、大阪府知事をもって充てる。
3 副本部長は、大阪市長及び堺市長をもって充てる。
4 本部員は、大阪府副知事、大阪市副市長、堺市副市長及び関係団体の関係部局長並びに第7条第3項に規定する事務局長及び事務局次長をもって充てる。
5 本部長又は副本部長は、必要があると認めるときは、大阪府知事大阪市長及び堺市長以外の執行機関の委員長(教育委員会にあっては、教育長)、委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員から選任した者を本部員として加えるものとする。

(会議)
第4条 本部長は、会議を招集し、これを主宰する。
2 副本部長は、必要があると認めるときは、本部長に会議の招集を求めることができる。
3 前項の規定による招集の求めがあったときは、本部長は、会議を招集しなければならない。
4 本部長は、会議の協議事項が大阪府及び大阪市に関する事項又は大阪府及び堺市に関する事項のいずれかになる場合は、当該事項に関係する副本部長及び本部員のみを招集して会議を開催するものとする。
  ただし、第2条第2号に掲げる事項を除き、本部長は、本部の目的を達するため必要があると認めるときは、当該事項に関係する副本部長と協議の上、当該事項に関係しない副本部長及び本部員を招集して意見を述べさせることができる。
5 本部長は、本部の目的を達成するため必要があると認めるときは、副本部長と協議の上、関係団体の議会の議員、特別顧問及び特別参与(特別職非常勤職員就業等規則(平成24年大阪府規則第287号)第2条第3号及び第4号並びに大阪市特別顧問及び特別参与の設置等に関する要綱に規定する特別顧問及び特別参与をいう。以下「特別顧問等」という。)並びに職員、府内の市町村の長、学識経験を有する者その他関係者に対し、会議への出席を求めるものとする。
6 会議は公開とする。

(指定都市都道府県調整会議)
第5条 第2条第3号に掲げる事項等大阪府及び大阪市又は大阪府及び堺市の事務の処理について必要な協議を行うため会議を開催するときは、当該会議は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の21の2第1項に規定する指定都市都道府県調整会議とする。
2 前項の会議について、協議事項が関係団体間で互いに関連する等本部長及び副本部長が適当と認める場合は、当該会議を同時に開催することができる。
  ただし、大阪市及び堺市の事務の処理について協議が必要となった場合は、この条の規定による会議とは別で大阪市及び堺市において協議を行うものとする。

(費用の支弁の方法)
第6条 関係団体は協議の上、本部の運営に要する経費について、共同で負担するものとする。

(事務局)
第7条 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。
2 事務局の事務は、大阪府大阪市副首都推進局及び堺市市長公室が共同して担う。
3 事務局に、事務局長、事務局次長その他の職員を置く。
4 事務局長及び事務局次長は、本部長が指名する。
5 事務局長は、本部長の命を受け局務を掌理し、事務局次長は、事務局長を補佐する。

   附 則
 この要綱は、平成27年12月28日から施行する。
   附 則
 1 この改正要綱は、平成28年4月19日から施行し、同月1日から適用する。
2 この改正要綱による改正後の副首都推進本部設置要綱について、副首都推進本部会議に報告し、承認を得たときは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の21の2第7項の規定により指定都市都道府県調整会議に関し必要な事項を定めたものとする。
   附 則
 この改正要綱は、令和元年8月21日から施行する。